本研究は、北京、上海、瀋陽、蘭州の4都市で下崗労働者といわれる人々各々1200〜1500人に対し、33項目にわたるアンケート調査を行い、その解析を行ったものである。下崗労働者とは、失業者とほぼ同義であるが、企業との契約状態は残っている人々をさす。比較的経済状況がよい北京・上海と、国有企業が経済の中心であるがゆえに経済状況がよくない瀋陽・蘭州でどのような違いが生じるかを分析した。下崗状態のときの生活費や再就職の実態など、4都市、あるいは下崗労働者の属性の違いによってどのような差があるかを明らかにしたものである。下崗状態になるのはどのような人々であるのか(前職の企業の経営状態や、その人の職務、学歴など)、再就職できたのはどのような人々であったのか(性別、年齢、学歴によって、前職による違いなど)などについて解析を行い、その結果学歴や性別、都市別に違いがあり、再就職においても差があることが認められた。さらに中国の政策立案者が下崗問題をどのように考え、再就職を促すための政策、下崗労働者の不満をどのように押さえ込もうとしているのかという政策面の研究も行った。また下崗労働者が多く出現するようになったのは、国有企業改革が本格化した98年以降のことであるので、国有企業の改革の状況および失業者に対する社会保障問題についてもあわせて考察を行ったものである。
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