シンガポールは東インド会社に進出してから世界的な中継貿易港としての基盤を築き、しかも、東南アジアにおける貿易、金融、情報、ハイテク、造船、海運の中心的存在である。すなわち、中継貿易港、商業都市としての歴史的な繁栄の上に、外国投資と相俟って目覚しい工業化と国際的金融機能が加わり、その活発な経済活動はアジアNIEsの一員として注目を集めている。東南アジアの中継貿易港として発展してきたシンガポール港では、コンテナ貨物の8割以上を接続貨物で占めている。近年は、日系メーカーの東アジアヘの生産拠点シフトに伴う同地域の国際貿易の拡大によって、同地域のコンテナ荷動きも隆盛を呈している。 東アジアのコンテナ荷動きの増大に応じて、日系国際複合一貫業者をはじめ、船社系や、航空会社系、メーカー系、輸送業者系、倉庫業者系、総合商社系が現地法人や駐在員事務所の拠点を拡充する一方、倉庫や物流センター施設の増強、内陸トラック輸送サービスの強化などハード・ソフトに相当な力を入れている。例えば、シンガポールにおける日系物流企業による自営倉庫や物流センターの運営、域内の輸配送、海外との一貫輸送窓口としての新規進出も見られる。 以上を踏まえて、本論文はまず、(1)中継貿易港としてのシンガポール港の略史に触れ、そしてシンガポール・ジョホール・リアウを結ぶ「成長の三角地帯」経済圏の構想を解明し、続いてシンガポールを中継港とするハブ・アンド・スポーク・ネットワークの構築を取上げる。また、シンガポールの港湾運営政策を紹介する。さらに、シンガポールにおける日系物流企業の経営戦略を明らかにし、最後に東南アジアのコンテナ物流におけるシンガポール港の役割を検討する。
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