研究概要 |
共同研究者であるマドリッド・カルロス3世大学のPaolo Quattrone助教授を招へいし、同助教授とともに、オムロン株式会社(平成13年7月30日)、トヨタ自動車株式会社(平成13年7月31日),松下電器産業株式会社(平成13年8月7日),ブラザー工業株式会社(平成13年8月8日)においてヒアリングを実施した。 4社に共通して指摘できるのは、本杜が在外子会社に対して極めて幅広い経営上の自治権(autonomy)を付与しているということである。その最大の理由は、各在外子会社は、所在地(国)の文化や社会制度の相違に規定された多様な経営環境のもとで経営活動を展開しており、本社による一元的コントロールが不適切であり、あるいは事実上不可能となっているからである。企業経営はつねに、市場すなわち各国・各地域の顧客のニーズに即応したものでなくてはならない。在外子会杜に対する自治権の付与は、こうした市場指向的な考え方の当然の帰結である。 多国籍企業は、グローバルな競争を勝ち抜くために、企業特殊的価値(いわゆるブランド力)の強化に意識的に取組んでいる。そのプロセスにおいて、抽象的なものを計数化するシステムとして非財務情報システムが重要な役割を果たしている。非財務情報システムを駆使したかかる経営は、21世紀型の新しいビジネス・モデルを示唆するものと評しうる。それは、今後の日系多国籍企業の消長を規定する要因ともなるであろう。 来年度は、以上のヒアリングで得られた知見についてより立ち入った検討を加えると同時に、今回なし得なかった企業グローバル化と経営活動の関係に関するフィールド・ワークを手がけることが課題となる。これらの課題が達成された時点で、研究の成果は別途、論文等の形で公表する予定である。
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