研究課題
研究分担に従って、フランス、ドイツ、スウェーデンを調査した。またEUの本部を訪問し、資料を集めた。地球温暖化防止をめざす京都議定書に対する態度に端的にあらわれているようにEU諸国は温暖化防止、森林保全、木質バイオマス利用に極めて熱心に取り組んでいる。フランスは2001年に森林法を改正したが、そこでは環境保全と木材生産の両立を志向しており、両機能の両立を不可能とするアメリカなどの考えと著しい対照をなしている。こうしたフランスの考えは人口が稠密な国で循環型社会を展望する場合、重要なものである。またドイツでは風力や木質バイオマスの利用が促進されており、地域定住・伝統景観を維持するために自然エネルギーの応用がめざされている。スウェーデンでは持続可能な森林管理の新たなモデルとしてGreener Forestが提示され、それにそった普及がおこなわれている。各国は国家林業プログラムを作成しているが、ドイツでは州レベルでも林業プログラムが策定されている。国家林業プログラムで注目されることは森林の持続的管理とともに、林業・林産業の競争力の強化が提起されていることであり、森林政策は環境保全を重視しつつも、産業的側面を無視することができないことを示している。また各国は林産物の認証にも積極的に取り組んでおり、ドイツでは約5割の森林がすでに認証の対象となっており、スウェーデンでは多くの森林が認証を受けている。こうした動きは市場メカニズムを重視しているアメリカ森林政策の動向と著しい対照をなしており、極めて興味深い動向である。
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