研究概要 |
本年も台北,香港におけるホームレス支援活動の現地調査および,住宅困窮世帯に対する支援活動の実態調査を継続して行った。まず台北においては,昨年に引き続く8月調査において,福祉局のみならず,ホームレス支援事業が労工局とも密接に連関しながら,日々の生活健康支援のみならず,就労支援もセットにされている実態が判明した。ホームレスのタイプ分けを通じての就労,生活支援がごく最近スタートした実態が明らかとなった。一方,香港においては,8月と1月の両回に分けて調査をおこない,大体の全貌がようやくつかめるレベルに達した。香港では政庁統治の時代から,福祉については,ある程度民間やNGO任せの伝統があり,そのためにホームレス支援活動もこうした,NGOの伝統,ありていに言えば,キリスト教関係の団体中心に,1980年代後半から,支援サービスが始まった。2回の調査において,その訪問の重点は,リスト化された支援施設の実際の訪問と,業務内容の確認,あわせて深夜のアウトリーチや家庭訪問を含めた,現地調査となった。支援組織の中心は,救世軍,St.James Settlement, NAACが中心となり,ひとつの統括機関として,SOCOが存在することが判明してきた。支援業務の内容はそれぞれ異なり,シェルター,デイセンター,短期宿泊施設,そして自立支援センターのような施設が,ある意味で多様に,展開していることがわかった。この事実については,日本ではほとんど知られていないために,雑誌シェルターレスなどを通じて,情報の公開につとめている。ホームレスの当事者そのものへの聞き取りが不十分であることと,最終年度に向けて,支援システムの全容を鮮明にする調査が必要とされる。
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