本研究の最終年度において、中国を中心として海外直接投資の環境に与える影響について重点的に現地調査を行った。まず電力部門について調べた結果外国資本は国内資本より技術力が高く、また技術移転も行っており、大規模企業でイメージにも関心を払い、メディアやNGOにも注目されているがゆえに、環境基準もより順守していることが明らかにされた。次に、国有企業、郷鎮企業と外資系企業における環境経営の実態を、電力だけでなく他の業界においても調査の上、統計的に比較し、ここでもやはり、外資系企業が最も環境基準の順守を厳密に行っていることが統計的に有意とされた。最後に外資をより広い観点から捉えて、世銀及びADBの環境プロジェクトの有効性について、現地において評価スタディを行った。そこでは、近年特にその質が改善していることが明らかにされた。さらに、一般のインフラ案件における、環境に対するインパクトが、そのコンディショナリティの付与によって大きな影響を受けること、及び行きすぎたコンディショナリティは、かえって逆効果も及ぼしかねないことが指摘された。なお、これらの結果は、海外に向けて発信すべく、英文によってまとめられており、今後の出版が計画されている。
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