本研究においてはアジアの中でも特に海外直接投資流入の規模が大きい中国を中心として、海外直接投資(FDA及びODA)が環境に及ぼす影響について実証分析を行った。まず民間のFDIについては正の要因としては技術移転が、そして負の要因としては有害物質を大量に消費する産業への資本投下がとりわけ重要であることが明らかにされた。次に国籍別に見た場合、華僑系資本の方が、欧米・日系企業よりも悪影響を及ぼすことが多いことが指摘された。この親会社の国籍は、産業の種類を別にすれば、投資規模や輸出比率などよりも拡大に大きな差をもたらしていることが、実証された。中国についていえば、民間化意外直接投資の約半分が華僑系資本によるものであるだけに、このことは特に重要である。次に本研究では世銀ADB、GEFを中心とした多国間援助機関の及ぼす環境へのインパクトを融資及び技術協力案件の双方から検証した。本研究はプロジェクトが終了してから数年を経過した案件をいくつか訪問し調査を行ったが、その大半は当初の目標を達成していることが確認された。最後に本研究ではこれらの調査結果をもとにして中国を例に途上国のとるべき外資政策と環境政策、及びそのリンケージの重要性についていくつかの提案を行った。
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