研究概要 |
今年度,チベット高原東縁辺を構成する、龍門山(Longmenshan)地域での地質調査を実施した.チベットの形成史を理解するために重要な地域にも関わらずLongmenshan地域では,詳細な地出調査は今まで殆どなかった.今回の調査で,道を利用し約400km2の広い地域から貴重なサンプルを採取できた.調査の目的の1つはLongmenshan地域における広域変形の年代を特定することにあった.そのために変形との関係が分かる花崗岩体(10カ所)及び広域変成岩類に伴う花崗岩質岩脈(数カ所)からサンプルを採取し、Ar-Ar年代測定のための雲母分離及びその雲母への中性子照射が終了した.雲母の冷却期間が終わり次第、測定に入る予定である。1つのサンプルでは、K-Ar法による年代測定が完了し、約39Maという第三紀の年代が得られた。近日中にジルコンを分離し,U-Pb法による年代測定に必要な準備を始める予定である.可能ならば測定を2002年の夏に行いたいと考えている. また,野外調査の際に記載した岩石構造のデータを整理し,顕微鏡観察を行うために必要な薄片を数百枚を準備しているところである.野外調査や顕微鏡のデータを吟味するために熱及び変形モデリングを行い,それらの成果の一分を国際誌で発表した.例えば,変成岩が流動的に変形するとその岩石中の大きな結晶はどのように振る舞うのかに着いて考察を加えた.実際の例として,共同研究者と一緒にCTスキャンを用いて回転したザクロの三次元の内部構造を非破壊に明らかにした.
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