研究分担者 |
宮本 毅 東北大学, 東北アジア研究センター, 助手 (90292309)
長瀬 敏郎 東北大学, 総合学術博物館, 助教授 (10237521)
成澤 勝 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00180539)
北村 繁 弘前学院大学, 社会福祉学部, 講師 (60214813)
中川 光弘 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50217684)
|
研究概要 |
中国と北朝鮮との国境に位置する白頭山は10世紀に大規模な爆発的噴火を引き起こし,そのときの噴出物は日本の東北地方〜北海道にまで到達している.噴火規模の大きさは過去2000年間では世界最大級といわれており,当時、周辺に栄えていた王朝などが大きな打撃を被ったことが推定されている.事実,926年の渤海王国の滅亡にはこの噴火が関与しているのではないか,という仮説も生まれている.しかし中国や朝鮮などの正史には,そのことを示唆する記述が一切存在していなかった. このため,我々のグループでは10世紀噴火について,その正確な年代の特定,噴火推移と広がりとの正確な把握,そして噴火が地域住民に与えた影響を自然科学的,人文科学的な調査・検討にもとづき明らかにしようとしている.平成13-14年度の調査研究によって,各々の項目について以下のような大きな進展が得られた. 噴火年代を決定するため,同噴火による火砕流堆積物およびそれの二次堆積物のなかから採集した木材18試料について検討を行い,そのうち状況の良い1試料についてウイグルマッチング法による精密な年代測定を試みた.その結果,最も外側の樹皮の年代として西暦936(+8〜-6)年が得られ,すでに日本国内の湖沼堆積物から求められている937年に一致する年代が得られた.次に地質学的手法によって,噴火の推移が調査検討され,ある間隔をはさんで2回の巨大噴火が発生していることが始めて明らかにされた.更に,両者のマグマを供給したマグマ溜まりは別々のものであることも岩石学的に明らかにされた.また,「遼史」をもとにして,渤海末期の県の分布位置(大体926年ころ)と969年ごろに廃された県,廃されていない県の位置とを比較検討した.その結果,廃された県の分布は地質調査に基づく10世紀噴火噴出物の分布域に大雑把には一致することが見い出された.これは同噴火による被災域を示唆する始めての事実かも知れない.
|