研究分担者 |
宮本 毅 東北大学, 東北アジア研究センター, 助手 (90292309)
長瀬 敏郎 東北大学, 総合学術博物館, 助教授 (10237521)
成澤 勝 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 教授 (00180539)
中川 光弘 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50217684)
菅野 均志 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30250731)
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研究概要 |
今までの調査によって,10世紀噴火の推移がほぼ明らかになった。10世紀噴火は2回の活動期に区分でき,両活動期の間には約1年の時間間隙が存在する。2回の活動期とも降下軽石(スコリア)の噴出から活動は開始し,破局的なイグニンブライト噴火へとほぼ連続的に至っており,いずれも短時間で終始したと考えられる。10世紀噴火は19世紀のタンボラ火山の噴火と並んで,過去2000年間において最大級の噴火と称されているが,このように2回のイグニンブライト噴火が1年内に発生したごとは,一回のイグニンブライト噴火で終始したタンボラ噴火とは異なり,むしろ複数回の噴火が発生したと推定されている入戸姶良噴火のようなカルデラ形成に関与した巨大噴火の噴火推移と同じである。噴出物の岩質は1期がアルカリ流紋岩質,2期が粗面岩質と明瞭に異なる。降下物分布から,両期では火口の位置が異なっていたと推定でき,岩質・噴出時期の相違から,10世紀噴火時に白頭山直下には独立した2つのマグマ溜りが存在し,順に活動を行った可能性がある。 更に,炭素14ウィグルマッチングにより求められた噴出年代と,文献研究により渤海移民記録から推定された年代とが誤差の中で近い年代を示し,噴火の実年代が数年内の幅の中で絞られてきた,と考えている。また,中国東北部〜朝鮮北部にかけて10世紀半ばに廃県となった地域で,廃県年代が近い地域は,火山灰・泥流といった10世紀噴火に起因する火山噴火堆積物の分布範囲ときわめて良い一致を示し,これは10世紀噴火による被災状況を始めてとらえたのではないかと考えている。
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