研究概要 |
中国大陸と日本列島を中心に,過去2万年間の環境変遷の枠組を解明するため,長江デルタのコア,レス堆積物,長江中流の湖底堆積物,黒河下流の湖沼堆積物,タリム盆地・ジュンガル盆地の砂漠・湖沼堆積物,日本の関東平野,佐賀平野,鹿児島湾,北海道南部の沖積層を対象として分析を行い,さらに中国・日本各地の既存データと比較検討を行った. 過去2万年の中で特に,以下の時期を節目として,東アジアの環境変動の枠組とグローバルな変動の関連を検討した.大陸内部では寒暖よりも乾湿の繰り返しが環境変動の優れた指標となる. 1.MIS2のダンスガードサイクル:黄土高原や中国南東部のレスはダンスガードサイクルをよく反映し,MIS2-3の基準となる.砂漠では特に18-17ka,13-12kaに顕著な土砂供給,砂丘形成.ダスト生成があり,南極アイスコアのダストピークと対応する. 2.ヤンガードリアス:日本列島では七号地相当層から有楽町相当層への変り目,HBGに対応する可能性が強い. 3.ヒプシサーマル:日本,中国南東部とも10kaから急速な海面上昇が進行するが,8.0-8.4kaに停滞/低下が認められAlleyの8.2ka事件に対応する.その後再び海面は急上昇し,海進ピークの6.5-5.5kaに達する.ヒプシサーマルの理解には10ka-5.5kaに至る全期間を捉える必要がある.大陸的にはヒプシサーマルの湿潤ピークは内陸から徐々に海側に移動し,夏のモンスーンの到達距離の変化(Anほか,2002)として捉えられる. 4.中世温暖期から小氷期へ:中世温暖期に中国内陸部はかなり乾燥していた.この乾燥期から一転,小氷期最初期にかけて湿潤となり,長江の水位上昇や黒河流域での流路変更が認められた. 以上のような節目を正確に捉え,東アジアのスケールの中で各々の現象の始まりと終り,現象の性質,生起する場所の変化などの検討から,グローバルな環境変動の波及過程や発生の要因が解明されるであろう.
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