研究概要 |
漆は、アジア原産の植物であり、私どもは、5年ほど前から各種研究助成金の援助によって漆樹液に含まれる多糖類に抗腫瘍活性、血液凝固促進作用、抗HIV活性など特異な生理活性があることを見出し、漆多糖類の構造と生理活性との関係を研究している。さらに中国の専門研究者(武漢大学・杜予民教授など)とのディスカッションを通じ、漆の資源循環活用システム構築の重要性を相互認識している。本研究では、これまでの研究を発展させて、研究例の少ないアジア産漆の生理活性や重合性、ウルシオール、ラッカーゼ酵素、漆多糖類などの成分を日本産漆(会津漆など)と比較することで性質の違いを明らかにして、循環型植物資源として持続的に高度有効利用することを目的とした。 漆は、環境に敏感な植物であり社会的,経済的変化のために、現在、日本ではほとんど採取されず、需要の99%を中国などアジア諸国から輸入している。しかし、採取後の処理や時間経過が不明であり、ラッカーゼ酵素の失活、ウルシオールモノマーや多糖類の含有量や生理活性の低下等の問題があり研究用としては使えない。 漆は5月から9月にかけて採取される。漆(漆塗膜)は産地によって性能が大きく異なると言われているが、同じ基準によって客観的に評価した研究はない。そこで本研究では、日本が多く輸入している中国湖北省、四川省、貴州省、およびそれらとは種類や性質が異なるが資源量の多いベトナム産漆,樹夜をそれぞれ数種類ずつ実際に採取し、重合(乾燥)挙動や生成塗膜の評価を樹液に含まれるウルシオールモノマー、多糖類の構造と生理活性、ラッカーゼ酵素の含有量や構造などを基礎的に考察することを目的とする。さらに産地による含有成分の違いや多糖類、ウルシオールの構造を明らかにし、最近、私どもが明らかにした漆多糖類の抗腫瘍活性など特異な生理活性について研究を行い、漆を循環型植物資源として次世代天然塗料や生理活性材料への応用を調べた。
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