研究概要 |
本研究の調査対象地であるウクライナおよびカザフスタンにおける土壌資源分布状況の調査を行った。その結果、チェルノブイリ(ウクライナ)周辺には、主として風成塵由来の中粒質土壌が、またセミパラチンスク(カザフスタン)周辺には、粒度組成の異なる水成二次堆積物由来の土壌が分布していることが明らかとなった。 これらの土壌試料のCs^+/Ca^<2+>選択吸着特性を解析した結果、双方のイオンの吸着は互いに競合せずむしろ独立である傾向が強く、Ca^<2+>の吸着サイトとして土壌有機物由来の変異荷電サイトが、またCs^+吸着サイトとして2:1型鉱物の一定荷電サイトが想定された。さらにCs^+-CECとCa^<2+>-CECの比較から、Cs^+吸着サイトへは、水和したCa^<2+>イオンが事実上non-accessibleである可能性が示された。これらの結果は、1)Cs^+吸着においては2:1型鉱物層荷電のみを考慮すればよいこと、2)吸着態Cs^+を他イオンによって交換溶出することはかなり困難であろうこと、を示唆している。 一般に土壌中に蓄積された有害元素に対する対応として、これを積極的に溶出・除去する方向と、溶出を抑え固定する方向が考えられるが、Cs^+の場合後者の手法が有効ではないかと考えられた。現在、本課題で当初想定していたCs^+の溶出・除去の可能性(前者のアプローチ)をさらに探るため、よりCs^+の溶出力が強いK^+,MH_4^+の利用可能性を検討中である。今後有効なイオン種を特定した後、植物による選択的吸収可能性について調べたい。
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