研究概要 |
マングローブは熱帯、亜熱帯の感潮帯に生育する樹木群で、その森林面積は世界全体で2億ヘクタールを占めるとされる。本調査ではベトナム戦争による撹乱後、天然更新によって回復しつつあるベトナムのマングローブ林において、その生態系の構造を調べ、更に分子集団遺伝学的方法を用いて構成樹木集団の遺伝的変異を解析し、環境適応の様子と、更新の動態を解明する。これにより、天然更新のメカニズムを最大限に利用したマングローブ林生態系の再生修復の方法を検討した。 1.マングローブの更新動態については特にマングローブ根系の炭素蓄積の過程に注目し、北部Nam dinhおよびThai binhに調査区をもうけ、マングローブ林の土壌中の炭素量を測定した。 2.遺伝的変異量については北部Don rui, Xuan thuy、中部、Canh duong,南部Can Gio, Vinh loi, Ngoc hienでヒルギダマシおよびメヒルギの葉のサンプルを採集し、AFLPおよびマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的変異を解析した。ヒルギダマシについては変異量は他の地域と比較して少なかったが集団間の遺伝的分化の程度は大きかった。メヒルギは南部と北部で遺伝的に大きく異なり、北部の集団は西表島のメヒルギとの関連が見られた。また南部のものはボルネオのものと関連しており、それぞれ別種であると見なすのが妥当であると考えられた。遺伝的変異量は北部では大きく、南部では小さかった。また葉緑体にコードされるMatKを含む領域(全長3kb)の配列を、系統が離れておりまた移動に関する形質等が異なる三種(上記二種とヒルギモドキ)で、北部、中部、南部の集団について解析した。その結果、種によって集団間分化の状態や変異量に大きな違いがあることを明らかにした。
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