研究課題
東南アジア熱帯林で、種子散布と種子捕食について以下の研究を行なった。1.タイ・カオヤイ国立公園で自動撮影装置と糸つけ実験による地上での果実消費者と、目視による樹冠での果実消費者の比較を行なった。同じ果実種に関して、地上ではネズミ、リス、ヤマアラシ、シカ、ブタの仲間が主たる種子捕食者で、ほとんど二次散布を行なわないのに対して、樹上ではサイチョウ、テナガザルが果実を消費して種子もほぼ無傷で運んでいることがわかった。2.森林残存面積が異なる3地点にて果実消費者の調査を行なった。大型種子をつけるFicus altissimaの果実消費者を、大型動物が残っているカオヤイ国立公園と、大型動物がすでに消失した都市近郊で比較したところ、前者では非常に多くの動物が果実を消費するのに対して、後者ではほとんどの果実が消費されず、地上で腐っていく様子が観察された。3.サイチョウの営巣場所での実生の継続調査では、あきらかに種子の搬入は巣穴前面で認められたが、当年性実生、それ以降の実生、稚樹では前面に多いという傾向が失われた。このことはサイチョウの巣穴には大量の種子が運び込まれるにもかかわらず、その多くが死滅することを意味する結果と考えられる。4.マレーシア・パソ森林保護区で、2年連続で一斉開花したShorea属7種から飼育実験で種子捕食者相を調べることに成功した。その結果、ゾウムシ・キクイムシなど種子捕食昆虫相には変化がなく、種子捕食率も1回目と2回目で有意な違いはなかった。
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