研究課題
基盤研究(B)
1)タイ国・カオヤイ国立公園の熱帯季節林において、果実生産と種子散布者である4種のサイチョウやシロテテナガザル、ブタオザルなどの樹状での果実消費を調査して、果実や種子の特性との関連を明らかにした。259種の植物のうち、大型で脂肪質に富んだ果実、1個あるいは少数の大型の種子をもつ種には、サイチョウのみによって種子散布されている「サイチョウ散布物語」と考えられるものがあった。シロテテナガザルは糖質主体の果実を好み、サイチョウとは明らかな嗜好性の違いが示唆された。2)サイチョウについては営巣木のまわりに散布された種子由来の実生の追跡を3年間行った。サイチョウの営巣木の下に散布された種子由来の実生は3年間のうちにほとんどすべてが消失したが、「サイチョウ散布物語」の実生は、少数であるが生存するものもみられた。主に種子や実生の集中による種子捕食が死亡の原因であると考えられた。3)カメラトラップを用いて地上に落下した果実を食べる動物相の調査をおこない、種子捕食者であるアカスンダトゲネズミ、マライシロハラネズミなどの小哺乳類の個体群動態をトラップを用いた標識再捕獲法によって3年間にわたって行った。主たる種子捕食者であるアカスンダトゲネズミ、マライシロハラネズミの個体数密度はこれまで調査が行われてきた東南アジア熱帯林にくらべて2〜3倍高いこと、また年1山型の個体数変動を示し、乾季の中頃に個体数のピークがみられることがわかった。その2種の繁殖期は同調せず、3年間、一貫してアカスンダネズミは雨季の初め、マライシロハラネズミは乾季の初めに繁殖を行うことが判明し、それぞれの依存する果実生産の季節性との関連が示唆された。4)これらのことから、サイチョウがいなくなってしまった森では、種子の集中分布にともなう種子捕食率が高くなり、いくつかの樹種では更新不能になると考えられ、森林の空洞化に伴うトップダウン効果があると結論された。
すべて 2004 2002 その他
すべて 雑誌論文 (11件)
Journal of Tropical Ecology 20
ページ: 421-427
ページ: 545-553
Journal of Tropical Ecology P. 20
Oecologia 133
ページ: 559-572
霊長類研究 18(3)
ページ: 284-289
Bird Conservation International (印刷中)
Biodiversity and Conservation (印刷中)
Bird Conservation International (in press)
Biodiversity and Conservation (in press)