Paramecium caudatumには、分化の過渡的段階と考えることができるsyngenと呼ばれる遺伝的に隔離されたグループが存在する。syngenはかつて16種が発見されていたが、現在9種が保存されている。P.caudatumは海水では生存できずシストも形成しない。したがって、syngenの分布と進化は大陸の移動と密接な関係を持って行われてきたことが予測される。一方、P.caudatumには核内共生細菌Holospora属が4種類発見されている。筆者らは大核特異的Holospora obtusaを使って、この細菌の増殖は特定のsyngen特異的であることを発見した。これは、HolosporaとP.caudatumの共生の歴史とP.caudatumのsyngenの進化に関係があることを示唆している。本研究では、P.caudatumを採集し、syngenの世界分布図を作成し、大陸の移動時期とsyngen進化が密接に関係しているかどうかを明らかにする。また、先祖型syngenのルーツを明らかにする。Holosporaを持つP.caudatumを採取し、その宿主がどのsyngenに属するかを調べ、HolosporaがいつP.caudatumと共生関係を成立させたかを明らかにする。平成14年度は海外では、ニュージーランドで採取を行ったが、Paramecium属は採取できなかった。昨年、上海で採取したParameciumが新種と判明した。さらに、盛岡市で採集されたP.bursariaの大核に共生する新種のHolosporaを発見した。
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