研究課題
1.水稲光合成のCO_2濃度反応の品種間差異の解明高CO_2濃度・温暖化気候の生育への影響予測モデルに品種の効果を組み込んで、その改良を図る目的で代表的水稲品種のCO_2濃度-光合成反応の違いを実験室で調査した。光合成のCO_2濃度反応を支配する炭酸固定効率には極めて大きな品種間差異が認められ、タカナリやTR72などインド型品種でそれが高く、日本型の日本晴、竹成で低いことがわかった。2.大気大循環モデルの温暖化予測気候のダウンスケーリング大気CO_2濃度など温室効果ガス濃度の上昇に伴う気候変化は大気大循環モデル(GCM)によって予測されているが、それを水稲の生育・収量と結び付けるには、GCMの予測値の面積解像度が3°-6°の緯度-経度であって粗すぎる。そこで、より詳細な温暖化影響評価を可能にするため、GCMの予測気候値を10×10kmの解像度にダウンスケーリングする方法を開発した。この方法によって、ECHAM4/OPYC3(ドイツ)、CGCM1(カナダ)、CSIRO-MK2(オーストラリア)、CCSR/NIES(日本)の各GCMの予測気候値のダウンスケールを行い、データベース化した。3.高CO_2濃度・温暖化気候の日本および中国の水稲収量への影響予測水稲収量へのCO_2濃度と温度の複合影響を予測するモデルに、上に示した4つのGCMの予測気候値を入力し、大気CO_2濃度倍増時の気候が日本各地の水稲収量に及ぼす影響予測を行った。その結果予測される高CO_2濃度・温暖化気候の水稲収量への影響は用いたGCMにより異なり、カナダのGCMでマイナスの影響が最も大きく、日本のそれで小さいことが示された。これらを総合して、予測される温暖化気候は関東以北で増収と生産の安定化そしてそれ以南で減収と不安定化を招くと要約することができる。中国南部の杭州について水稲の各作期別の温暖化影響予測を行った結果では、4月〜6月の植付け時期の水稲で高温不稔の発生により著しく減収することが示された。
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