研究課題/領域番号 |
13575031
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋床 泰之 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (40281795)
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研究分担者 |
大崎 満 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60168903)
田原 哲士 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50001475)
長谷川 利拡 農業環境技術研究所, 地球環境部, 主任研究官 (10228455)
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キーワード | 強酸性耐性イネ / 内生微生物とスウォーミング / 微生物フローラの多様性 / 単生窒素固定細菌 / 伝統農法 / 根の機能性 / ローカルライスバラエティ / Siam Unus |
研究概要 |
ローカルイネ(Siam Unus)とコシヒカリ並びにIR72の窒素に対するレスポンスを調べた。Siam Unusは窒素に対するレスポンスがほとんどなく、その低反応性を補うべく低窒素状態での根系形成能が極めて高いことが示された。恐らく、根浸出物としての根からの光合成産物のロスが、窒素反応性の高い多収性イネに比べて著しく低いと思われる。この性質は脱粒性が低いことを除けば雑草イネに良く類似しており、南カリマンタンの自家採種と伝統農法と強酸性水田による一期作がこのような水稲ローカル品種を生み出したと考えられる。一方、表面殺菌したSiam Unus種籾および植物組織内(茎内と根内)のエンドファイトを検索し、それぞれ3〜4種類の内生細菌を単離した。茎内部から分離した細菌は、単独培養で無窒素半流動ゲル培地のガラス管内壁上をスウォーミングによって移動した。ところが別の分離菌株との混合培養ではスウォーミングの挙動は認められなくなった。スウォーミングはクォーラムセンシング内生シグナルによって誘発されることが分かっており、これらの内生細菌コンソーシアムの相互制御系の存在が示唆された。また、根の内生細菌では混合培養でもスウォーミングが頻繁に起こり、根内での内生細菌の移動とコロナイゼーションの拡大に役立っているものと考えられた。在来品種は根の気道が極めて大きく、これが根周辺を酸化的に保つとともに、内部への機能性細菌の侵入と定着を容易にしていることが示された。これらの知見は、株と根を切り分けて田植えを繰り返す現地農法に通ずるものがあり、伝統農法による選択圧とも考えることができる。
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