研究課題/領域番号 |
13575035
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
唐 艶鴻 国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 主任研究員 (40270590)
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研究分担者 |
関川 清広 埼玉大学, 理学部, 講師 (40226642)
鞠子 茂 筑波大学, 生物科学研究科, 助教授 (10251018)
小泉 博 岐阜大学, 流域環境研究センター, 教授 (50303516)
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キーワード | 炭素循環 / CO2 / 草原 / チベット / 光合成 / 土壌呼吸 / エネルギー収支 / 水循環 |
研究概要 |
青海・チベット草原生態系における炭素循環のプロセスとメカニズムを解明するため、中国青海省海北地区に位置する中国科学院西北生物高原研究所生態定位站の草原(37°29'N-37°45'N,101°12'E-101°23'E,標高3250m)において、炭素・水・熱フラックスの長期観測、草原の代表種についての光合成・呼吸特性測定、および異なる放牧条件下で植物のバイオマス生産と種多様性の関係に関する実験測定を行った。CO2フラックス測定の結果から、一年の間に草原生態系のCO2放出と吸収ピークがそれぞれ二回あることがわかった。CO2の吸収期間は、草本植物の生育季節である5月下旬から9月ごろまでの間と冬の11月下旬から12月ごろの間であった。冬期におけるCO2の吸収は現在そのメカニズムについて不明だが、蘚苔類の光合成による貢献があると推測される。一方、生態系からのCO2放出がみられるのも年に2回、すなわち、10月から11月ごろまでの間と3月下旬から4月ごろまでの間があった。特に春先のCO2の放出ピークが高く、凍土の解凍によって土壌系に溜め込んだCO2が放出されることが大きな要因と考えられる。つぎに、当該草原生態系のCO2フラックスの変化に及ぼす環境要因について検討してみた。日中の積算生態系CO2吸収フラックスは、各月で比較するとPPFDの日積算値に対し、直角双曲線的な関係を示した。一方、夜間の平均CO2放出速度は、温度に対して指数関数的な正の関係を示したが、土壌水分に対しては負の相関関係を示した。気温と土壌温度は当該草原生態系の炭素動態に影響を及ぼす主な環境要因と考えられる。したがって、地球温暖化とそれに伴う生態系の水分条件の変化によって、この草原生態系のCO2放出量は大きく変わることが予想される。さらに、異なる体制の植物について、受光体制と炭素収支との関係を調べ、強光環境下で匍匐性の植物種は直立性と比べ光合成活性の低下が遅く、強光環境下で高い光合成能力を維持できることが示唆された。また、放牧圧の高い草原では、植物種の多様性が低下し、バイオマスも減少したことがわかった。
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