研究概要 |
1.焼畑による土壌生態系への影響の解明:サラワク州ミリ郊外の軽度の択伐を受けたニア,焼畑荒廃地のバカム試験地において試験焼畑を実施した.焼却植生量が,ニアでは100,200,300t/ha,バカムでは50,100t/haとなる試験区を設けた.ニアでは,焼土効果,灰の投入による土壌養分の増加がみられたが,バカムでは元の養分量が乏しいこともあり,土壌の変化はみられなかった.流去水による灰養分の損失は,灰投入量の数%であると推察された.また,地温の上昇に伴う有機物の分解促進がみられた. 2.火入れ強度と植生回復過程の関係の解析:平成13年に焼畑試験を行ったクチン郊外の試験地2ヵ所で植生回復過程を調べた.火入れ後の発芽数は,火入れ強度が増すと減少した.埋土種子の発芽試験から,強い火入れにより表層の種子が死滅することが明らかになった.10ヶ月後の現存量は,火入れ強度とともに増加し,200t/ha区で飽和値に達した.200t/ha以上の火入れでは,埋土種子が死滅し発芽数は減少するが,火入れによる養分還元により栄養豊富となり,生存した植物の生長は増加すると考えられた. 3.熱帯雨林の遺伝子-データバンクの構築:ランビル国立公園内の長期観察プロット内に1haの方形区を2カ所設け,優先する樹種を10種選び胸高直径1cm以上のものについてサンプルを採集した.DNAを抽出し保存することによりDNAバンクとした.また位置及び乾燥標本の情報とあわせてデータファイルを作成した. 4.フタバガキ科樹種の遺伝的構造の解析:サラワク州の5カ所の国立公園でフタバガキ科樹種の葉を採取し,DNAを抽出した.葉緑体DNA, AFLP,マイクロサテライトを用いて遺伝的変異を検出し,自然集団の遺伝的構造を解析した.AFLPでは中立性から期待される以上の変異がみられたが,葉緑体の変異は少なかった.
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