研究概要 |
1.焼畑による土壌生態系への影響の解明:平成14,15年度に実験焼畑を行った4試験地で,陸稲耕作後の調査を行い,土壌試料を分析した.粘土質土壌のバライリンギン及びニアでは,耕作後も土壌肥沃度は比較的高く維持され,植生の回復は良好であった.砂質土壌のサバールでは,有機物や養分量が大きく低下し,二次林植生は貧弱であった.一方,荒廃地で焼却バイオマスの小さかったバカムでは,耕作中から土壌肥沃度は低く,二次林植生は極めて貧弱であった.かつてイバン人は,天然性林やそれに近い二次林を焼却し,陸稲を連続耕作していた.この農法は,強風化土壌が卓越する本地域では,土壌酸性の矯正及び養分の添加の面から必要不可欠であったと考えられた.今後,焼畑を代替する持続的農法を開発するためには,侵食のみならず,土性及び土壌酸性を考慮する必要があると考えられた.一方,砂質土壌では,農地利用は不可能であり,森林として保全する必要があると推察された. 2.焼畑2年後の植生回復状況について刈り取り調査をおこなった。直径成長,樹高成長,現存量成長とも,焼畑実施区でしかも燃焼強度が強い区の方が良好であり,適切な焼畑はむしろ植生回復を促進させるという結果が得られた。また,焼畑跡地に植裁された苗木の生態生理を調査し,植裁環境への順応の樹種特性が明らかにされた。 3.フタバガキ科樹種の遺伝的構造の解析:フタバガキ科樹木を中心にサラワク州の8カ所の国立公園と5カ所の人工林および森林保護区から総計5,000個体分の葉のサンプルを採集してDNAを抽出し、遺伝子バンクを構築した。さらに、Dryobalanops aromatica,D.lanceolata,Shorea beccariana,S.macrophyllaについてAFLP、マイクロサテライトおよび葉緑体変異を用いた集団の遺伝的構造解析を行った。
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