本研究の目的は、タンザニアの住血吸虫症流行地に居住する住民を対象に、個人を厳密に識別しながら河川の水との接触量と排泄虫卵数を定量的に測定することによって住血吸虫に感染し易い住民と感染しにくい住民を個体識別することである。 これまでの住血吸虫症研究では、個人の排泄虫卵数の定量化は可能でも、個人の行動の定量化には限界があり、河川との接触量と住血吸虫感染陽性率や感染強度との相関を集団として明らかにすることは出来ても、個人においても同様の事実があるかどうかについては解明することが極めて困難であった。 従ってこの目的を達成するためには、まず住民の行動観察を個人別に厳密に行う方法を開発することがもっとも重要な鍵となると考え、初年度の主要な目的を行動の個人別定量化の方法の確立とした。我々は、住民の行動を個人別に厳密に観察できる方法として、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)が最も可能性がある方法と考え、現在行動観察への導入を試みている。 本年度は、最も観察が容易と考えられる東アフリカの乾季、2002年2月2日から3月22日の間、タンザニアのマンソン住血吸虫症流行地における小学生を対象に、行動(特に水接触行動)観察の方法として、下記の三種の方法を比較検討している(継続中)。 1)直接観察法(個人を起床時間から就寝時間まで追いかけてその行動を記録する) 2)質問票による方法(前日の行動をインタビューによって聞き取りを行う) 3)GPSによる方法(自動的な行動軌跡の記録からその行動を推測する) 現在観察を継続中であるので、最終的な結果は得られていないが、GPSによる自動的な行動軌跡の記録に特に問題がないことが明らかになりつつある。
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