研究概要 |
本年度はタイ・マヒドン大学熱帯医学部(Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University)およびラオス保健省マラリア研究所(National Institute of Malariology)を訪れ、両国の薬剤耐性マラリアの疫学に関する学術調査を行った。 マヒドン大学熱帯医学部附属病院の検査室に、in vitro薬剤感受性試験の携行実験システムを設置し、病院を訪れる患者から末梢血を採取し、それを培養に移して原虫の耐性度を調べた。患者の臨床における治療効果とin vitroでの試験結果の相関を現在採るべくデーターを整理中である。また、同病院で薬剤耐性マラリア治療のためのコンビネーションセラピー(Artesunate+Mefloquine, Artesunate+Lumefantrine)の臨床試験を並行して行った。なお、本研究はマヒドン大学の倫理委員会を通過し、採血に際しては患者からの説明と同意を書面でとった。 ラオス保健省マラリア研究所では、近年のマラリア薬剤耐性に関わる情報の収集にあたり、マラリア流行地を訪問調査することで、来年度のin vitro薬剤感受性試験実施のための基礎的な状況分析を行った。 フィリピンで昨年度採取した32検体の熱帯熱マラリア患者の検体は、原虫のDNAを抽出して薬剤耐性遺伝子の解析を行った。pfcrt遺伝子およびpfmdr遺伝子の点変異を調べたところ、8割を越える原虫にクロロキン耐性のマーカーが発現されていた。しかしながらタイで拡散しているクロロキン耐性マラリアの遺伝子配列とは異なったパターンを示し、フィリピンで地域特異的な薬剤耐性の選択が行われている可能性が示唆された。 来年度はタイにおける薬剤耐性マラリアの遺伝疫学研究を深め、ラオスのデーターをたしあわせ、大陸部および島喚部の薬剤耐性マリアの地域特性を明らかにしてゆく。
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