研究概要 |
サルモネラ属菌及び赤痢菌に対する迅速診断キットを構築し、このキットを用いてタイの市中病院で実際に下痢患者からの原因菌の同定を行った。本キットはSalmonella Typhi、その他の血清型のサルモネラ属菌、A、B、C、D群赤痢菌それぞれの特異抗原に対するモノクローナル抗体を用いたMembrane(dot)ELISAである。従来の培養法とWestaern blotting法と比較した検出感度は有為に高く、迅速簡易同定法としてタイで使用できる事が分かった(Asian Pac.J.Allergy lmmunol.19:115-127,2001)。 腸管出血性大腸菌感染による溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症は日本のみならずタイでも重要な問題である。しかし、本症の原因であるShiga toxin 1(Stx1)の標的臓器の一つである腎臓の結合部位は明らかではない。タイでHUSを発症して死亡した幼児(21ヶ月)と成人(81才)の腎標本に対してStx1特異抗体を用いて免疫染色を行ったところ、成人では尿細管に限局した結合が見られただけであったが、幼児では尿細管だけではなく糸球体全体に結合が強く見られた(Microb.Pathog.31:59-67,2001)。 Helicobacre pylori感染症は日本だけではなく、東南アジアを含む世界的な問題である。本症の重要な病原因子であるVacAと分離菌株の遺伝子型を比較し、どの遺伝子型が最もVacA分泌が高いかをインド分離株を用いて調査した。その結果、VacAの高い産生には、vacAs1、vacAm1、iceA1の遺伝子型が対応する事が分かった(lnd.J.Med.Res.in press,2002)。
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