研究概要 |
RT-PCR法を用いて、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性患者血清約100検体から、HCV遺伝子の種々の領域を増幅し、その塩基配列を決定した。NS5B領域の塩基配列に基づいて、それぞれのHCV分離株のサブタイプ(主としてHCV-1b,-1c,-2a)分類を行った。NS5A領域については、代表的な数株(後述のHCVウイルス量の多いものと少ないもの)について全長の塩基配列を、残りの株についてはインターフェロン感受性決定領域(ISDR)を含む領域のアミノ酸配列を決定した。それらのアミノ酸配列をそれぞれのサブタイプの標準株の配列と比較し、変異部位及び変異数について調べた。また、上記の患者血清中のHCVウイルス量を半定量的に測定した。HCV-1b,-1c,-2aのいずれのサブタイプにおいても、HCV RNA量は10^3コピー/ml以下から10^6コピー/mlまたはそれ以上にわたり、ウイルス株によって大きく異なっていた。そこで、各ウイルス株のISDRの変異の程度と血中ウイルス量との相関について検討したところ、いずれのサブタイプにおいても、ISDRの変異数が4箇所またはそれ以上の場合には血中ウイルス量が有意に低いことが明らかになった。 一方、HCVのNS5Aの全長およびその欠失変異蛋白を発現するプラスミドを作製し、インターフェロン抗ウイルス活性発現の主要な機能分子のひとつである2',5'オリゴアデニル酸合成酵素とともに培養細胞に発現させ、両者の相互作用について検討を開始した。これまでの予備的実験より、両者は細胞内で結合することが明らかになった。また、両者の結合はNS5Aのアミノ酸変異により影響されることを示唆する成績も得られた。この点については次年度に詳細に解析を行う予定にしている。
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