研究概要 |
昨年度に引き続き、C型肝炎ウイルスサブタイプ1b(HCV-1b)のNS5Aと、インターフェロン抗ウイルス活性発現の主要な機能分子のひとつである2',5'オリゴアデニル酸合成酵素(2-5AS)それぞれの、全長および欠失変異蛋白を培養細胞に発現させ、両者の相互作用について検討した。NS5Aと2-5ASを培養細胞で発現させると、細胞質内の核膜周辺部において両者は部分的に共局在した。GSTプルダウン法および免疫沈降法により、NS5Aと2-5ASが結合すること、その結合責任領域はNS5Aにおいてはインターフェロン感受性決定領域(ISDR)(aa 237-276)を含まないアミノ末端領域(aa 1-148)、また、2-5ASにおいては中央部2カ所(aa52-104,184-275)であることを明らかにした。昨年度の臨床サンプルの検討から、NS5Aの37位のアミノ酸残基PheからLeuへの変異(F37L)により、血清HCV RNA量が高くなる可能性が示唆されていたので、NS5A(1-148)に幾つかの点変異(F37L, F37N, F37S, F37Y)を導入し、全長2-5ASとの結合に対する影響を調べた。その結果、2-5ASとの結合は、野生型と比較して、F37Lでは2倍に増強し、逆にF37Nでは1/3に減弱することがわかった。さらに、このNS5A(1-148)、NS5A(1-148)F37N或いは全長NS5Aを構成的に発現する培養細胞株を作製し、これらを用いてウイルスレスキューアッセイを行った。その結果、NS5A(1-148)発現細胞は全長NS5A発現細胞と同様に、脳心筋炎ウイルスに対するIFN抗ウイルス活性を阻害した。一方、2-5ASとの結合が減弱しているNS5A(1-148)F37N発現細胞では、IFN抗ウイルス活性の阻害は、野生型NS5A(1-148)発現細胞より有意に弱かった。以上の成績より、NS5Aが2-5ASとの相互作用を介して、ISDR非依存性にIFNの抗ウイルス活性を阻害する可能性が示唆された。
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