研究概要 |
1)インドネシア患者血清から得られたC型肝炎ウイルス(HCV)分離株について、NS5A蛋白のインターフェロン(IFN)感受性決定領域(ISDR)を含むPKR結合領域のアミノ酸配列を推定し、各サブタイフ別に標準株の配列と比較して、変異部位及び変異数を求めた。そして、患者血清中のHCVウイルス量との相関について調べた。その結果、HCV-1b,-1c,-2aのいずれのサブタイプにおいても、ISDRの変異数が4箇所またはそれ以上の場合には血中ウイルス量が有意に低いことが明らかになった。 2)HCV-1bのNS5Aと、IFN抗ウイルス活性発現の機能分子のひとつである2',5'オリゴアデニル酸合成酵素(2-5AS)が培養細胞で結合すること、その結合責任領域はNS5AにおいてはISDRを含まないN末端領域(aa 1-148)、また、2-5ASにおいては中央部2カ所であることがわかった。臨床サンプルの検討から、NS5Aの37位のアミノ酸残基PheからLeuへの変異(F37L)により、血清HCV RNA量が高くなる可能性が示唆されていたので、NS5A(1-48)に幾つかの点変異(F37L, F37N, F37S)を導入し、全長2-5ASとの結合に対する影響を調べたところ、2-5ASとの結合は、野生型と比較して、F37Lでは増強し、F37Nでは減弱した。さらに、ウイルスレスキューアッセイにより、NS5A(1-48)は全長NS5Aと同様に、IFNの抗ウイルス活性を阻害すること、一方、2-5ASとの結合が減弱しているNS5A(1-48)F37NのIFN抗ウイルス活性の阻害は、野生型NS5A(1-48)より有意に弱いことがわかった。 3)以上の成績より、NS5AによるIFN抗ウイルス活性の阻害は、ISDR依存性と非依存性の2通りの機序によることが明らかになった。ISDR非依存性の機序においては、NS5Aと2-5ASとの相互作用の関与が示唆された。
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