研究課題
アジアを含む熱帯地域における公衆衛生的に最重要の蚊媒介性ウイルス感染症であるデング熱・デング出血熱の出現・拡大要因をさぐるためにアジア主要国においてウイルス、媒体蚊、出血熱患者の病態を2年間の予定で総合的に調査している。本調査の初年度である平成13年度はベトナム、フィリピン、シンガポール、インドネシア、マレーシアの各国においてデング患者の末梢血からウイルスを分離するとともに、媒介蚊である熱帯シマカの卵を採取し熱帯医学研究所に保存した。これらの一部のウイルス株についてはすでにその遺伝子解析を開始した。いままでに得られたデータからはベトナム南部で分離されたデング4型ウイルスについては過去のウイルス株また他の国の株を比較した結果、ベトナム特有の株が土着して流行している事実を示す結果がえられた。このことはベトナムにおいて患者の重症度が他の国と比較して軽症であることとの相関が考えられるが、ウイルス病原性に対する最終的な評価は平成14年度の調査結果を待たねばならない。媒介蚊の調査においてはアジアから持ち帰った熱帯シマカの卵から孵化させた蚊において重症の患者から分離されたデングウイルス2型は軽症の患者から分離された株とはことなる感受性をしめしデングの重傷型が拡大した要因の一つとしてウイルスが変異したことにより蚊への感染性が変化した事の影響があるのではないかと推測された。この蚊とウイルスの感受性については次年度さらに多くの国の蚊とウイルスの組み合わせについて詳細に解析する予定である。デング出血熱患者の病態についてはベトナムとフィリピンにおいて末梢血中に出現するウイルス抗原陽性単価細胞の解析をフローサイトメトリーを用いて行った。その結果一部の患者においてはB細胞マーカーを持った細胞群にウイルス抗原の陽性所見を認めたが,必ずしも全ての患者でこの現象を認めなかった。従って依然としてデングウイルスの人における標的細胞は不明でるが今後はデングウイルスの血清型により標的細胞が異なる可能性も視野に入れて次年度に再度詳細な検討を試みる予定である。
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