研究概要 |
最近、欧米ではAZTをはじめとする強力な薬物療法の中断等より、HIV初感染、未治療者における薬剤耐性ウイルスの存在が問題となっている。本研究は,アジアの中でも特に、推定HIV感染者数が世界最大とされているインドと、その隣国にあって未だHIVの浸淫状況の情報に乏しいイスラム国パキスタン,および日本と経済的、文化的交流の盛んなベトナムにおいて、HIV初感染、未治療者におけるHIV薬剤耐性ウイルスの浸淫状況を調査し、これらウイルスの遺伝学的特徴(genotype)と感染性(phenotype)および種々の薬剤に対する感受性を解析し、発展途上国における将来の薬物治療などのAIDS対策に重要な基礎的および臨床的データーを提供する事を目的とする。 現在、広く利用されている薬剤耐性に関するデーターはサブタイプBにおけるものが殆どであり、世界に広く流行するサブタイプCや日本の性的接触による感染に多いサブタイプEなどいわゆるnon-B型のHIVにおけるデーターのに乏しいのが現状である。われわれが調査対象とした地域に流行するサブタイプは多くがnon-B型である。 平成15年度新たに、アフリカ・ケニアにおいて34例、インドにおいて17例、パキスタンにおいて7例の異性間性的接触により感染した初感染、未治療患者について解析し得た。その結果、強い耐性を示す1次変異は逆転写酵素領域およびプロテアーゼ領域共にみられなかったが、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤に対する2次変異がそれぞれ平均29〜70%と、特にプロテアーゼ領域に高頻度にみられた。
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