研究概要 |
本研究期間の調査において、インドにおいて56例、パキスタンにおいて17例、べトナムにおいて13例、アフリカのケニアにおいて34例の異性間性的接触により感染した初感染、未治療患者について、逆転写酵素領域およびプロテアーゼ頭域における耐性関連遺伝子の解析を行なった。その結果、インドの2例にプロテアーゼ阻害剤に対する耐性に大きく影響を及ぼすと考えられている1次置換(G48V:48番目のグリシンがバリンに、V82A:82番目のバリンがアラニンに)が認められた。この2検体にみられたり一次置換はサキナビル、インジナビル、リトナビルに対する耐性変異である。すなわち、臨床的にサキナビルの単剤大量投与を受けた群では、高頻度にG48V変異が見られ、引き続きV82Aの変異が起こり、インジナビルやリトナビルにも交叉耐性を示すようになるという報告があり(Nature374,1995)、この検体に見られたG48V変異とY82A変異をもつ2症例は、このようなエピソードをもつ患者から伝播された可能性がある。 その他の検体においては、強い耐性を示す1次変異は逆転写酵素領域およびプロテアーゼ領域共にみられなかったが、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤に対する2次変異が29〜70%と高頻度にみられた。これら、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤に対する耐性関連変異およびプロテアーゼ阻害剤に対する2次変異の耐性化に関する意義については、現在議論の分かるところであり、今後の研究課題である。 今までに報告されている薬剤耐性に関する研究は欧米に広く蔓延するsubtype Bが中心であったが、今後は途上国を中心に,薬剤耐性をもったHIVが広がる可能性があることから、アジア、アフリカに広く流行しているnon-B subtypeを中心に、調査を進めて行く必要がある。
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