研究概要 |
アジアではSARS,トリインフルエンザなどの新しい感染症とともに、マラリア、デング熱、ウイルス性下痢症、ウイルス性肝炎、エイズなど大きな課題が存在している。ここでは後者の3感染症について分子疫学的方法を用いて研究した。研究方法として、下痢症に関連する複数のウイルスをmultiplexPCR法での検索法とイムノクロマト法を開発した。HIVはサブタイプをPCRで決定するためのプライマーを確立した。検体の採取は主に中国、タイ、ベトナム、日本で行った。ロタウイルスは従来A群の1型が中心であったが、1991年ころから1型が急速に減少し、2,3,4,9型が増えてきた。すなわち流行の血清型が変わってきており、今後大きな流行が起きる可能性とワクチンの開発が重要であることが示唆された。腸管アデノウイルスはどの国でも41型が主流であったが、サブタイプでは変化があり、各国での特有な流行が見られた。ノロウイルスはGIIのLordsdale近縁株が主流を占めていた。タイ・ベトナムで初めてノロウイルスの疫学を報告した。これらの国ではアストロウイルス、サポウイルスも僅かながら検出された。B型肝炎ウイルスを世界10カ国で調べたところ、東南アジアではpreS領域の変異、特に欠損を伴う株が多く見られ、特に肝硬変あるいは肝癌と関連していた。HIVでは新しいプライマーを用いることによりB、E型のみならずA、C型が容易に検出できた。これらの分子疫学的ウイルスの分布の要因としてヒト、食物、気候等が関係していると考えられるがまだ結論は出ておらず、その点も含めて今後検討したい。
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