本研究の目的は、西洋古代中世思想文献群から、西洋思想の深層にあって今なおその基底として機能している伝統的基本概念を選び出し、近年この方面で頓に整備されつつあるデータベースを活用しながら、伝統的カテゴリーの成立過程を徹底的に追跡し、その分析、整理の成果を目指すことである。この目的を達成するために、初年度は、テキストの調査ならびに最近の研究状況の調査などの基礎的作業を中心におこなった。また、これまでの研究成果を整理し直し、不足点を検討する作業もおこなった。以上の目的を達成するために、以下の手順で作業が進められた。 (1)西洋思想の歴史において重要と思われる代表的な基本概念、およびそれに関連する緒概念のうち、これまでの研究で把握し切れなかったものについて、それが西洋古代中世哲学の文献の中でどのような現れ方をしているかを、『アリストテレス全集』、『キリスト教作家全集』、『トマス・アクィナス全集』等のテキストのCD-ROM版を利用して整理した。これを基に、インデックスを作成するための基本的な準備が整えられた。具体的な作業は次年度に行う予定である。 (2)集められたデータをもとに、各分担者は、それぞれの専門分野から調査を行なった。中澤はギリシア哲学研究の立場から、ギリシア哲学の基本概念の成立過程を調査・考察すると共に、そうした概念の西洋文化への歴史的影響についても調査をおこなった。また、花井は、中世哲学における基本概念の役割に関して総合的な考察をおこなった。
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