本研究は、時間生成を重要な実在的様相のひとつと考える立場から、時間生成にまつわる存在論的推論を適切な形で処理できる時間論理の形式体系を構成すること、そしてその形式体系を前提として、時間生成をその中心的位置に組み込んだ包括的存在論を構築することを目的として行われた。 前者に関しては、(命題)時間部分論理PS4.3を構成した。PS4.3は、ディオドロス様相論理として知られているS4.3という体系によって単純部分論理SPLを時間化した体系である。S4.3はそれを特徴づけるクリプキ・フレームが稠密順序列となるので、そこにおける可能命題は、稠密直線時間上の現在または未来の少なくとも一つの時点において真であることを主張する命題として解釈することができるのである。PS4.3の構文論と意味論を規定したうえで、タブローによるその証明論を構成し、健全性・完全性・決定可能性が成立することを示した。 後者に関しては、単純部分命題論理にもとづいて時制主義的な存在論を構築する方法を提示した。また、いくつかの式を公理として追加することにより、PS4.3に基づいて実体主義的な時間様相の形式存在論を構成できることを示した。 さらに、タイムトラベルの可能性と時間生成の実在性という、時間に関する二つの具体的な存在論的問題についても考察した。前者については、実体の歴史に即した形で実在する過去と実在しない未来という区別を行い、少なくともパラドクスを引き起し得るような過去へのタイムトラベルは不可能であることを示した。後者については、できごとの生起自体のなかに可能性から必然性への変化・非実在性から実在性への変化という時間的方向性が含まれていることを示し、そこに時間生成の実在性を見出すべきであることを主張した。
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