研究概要 |
非本質主義の観点を首尾一貫させる立場から技術哲学の諸問題を全体的に捉えなおす試みを行った。そのために、自然と技術、科学と技術、技術と社会、といった技術概念を規定するために用いられてきた哲学的前提を再検討し、そのような二元論の見方をとらない仕方で問題を捉えなおす試みを行った。 1.自然と技術:プラトン、アリストテレスらによる「自然の模倣」としての技術という観点が、中世から、近代初頭にかけて「自然支配の道具」としての技術という見方へと転回する過程を歴史的状況の変化との連関で捉えなおした。 2.科学と技術:科学と技術の分離というイデオロギーは、むしろ両者が接近してくる近代から現代になるに従って強固になってくるという「パラドクシカル」な事態が捉えられることを示した。また、それに基づいて、技術は科学の応用だという、伝統的見方がそのままでは維持できないこと,むしろ、「応用」と呼ばれている過程の中にこそ技術的知ばかりではなく、知識概念一般を考える上で決定的に重要な特徴が備わっていることが示された。 3.技術と社会:決定論と道具主義の連関という観点に基づいて、技術の「他者性」、「創造性」へと目を向ける必要性を示した。 こうした観点から、非本質主義の観点を重視したデザインの原則が可能であり、かつ必要であることを示した。その際、デザイン、そして技術は必然的に失敗するものである点に注目することの必要性が、H.ペトロスキーの事例研究などを参照しながら示された。
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