本研究は、古典ギリシア的観照(theoria)の伝統に基礎をおく現代的知識論とその行為論の下に成立した従来の観想的人間論および倫理学に対して、ヘブライ的ハーヤー存在論に基づく自己脱自的で創造的(ポイエーシス)「新倫理学的公共哲学」の構築を目指し、研究合宿やシュンポジウムを通じ研究を重ねた。その結果、ヘブライ的倫理学の著書『他者の原トポス』を上梓し、研究雑誌『エイコーン』を年2回出版しつつ、他方で『キリスト教辞典』の出版を準備しつつある(本年度6月刊行予定)。その中で上述のハーヤー的存在、ダーバール的言語、ケノーシス的人間論、ベリート共同体、プネウマ的エチカなどのテーマを深化・発展させた。ギリシア教父研究を一層充実するため「東方キリスト教研究会」を学会として発足させ(2001年9月)、さらに教父研究会の運営を円滑にして、関東の研究者との交流も活発化した。この研究はビザンティンおよびロシア宗教・文化哲学研究にも多大の寄与をなし、その方面の研究者との共同研究も進めた。他方、このエチカ的公共哲学の国際化のため、夏京都における4回にわたる国際シュンポジウムでハーヤー論を発表し、フランスに出張しユネスコとの連絡の下に公共哲学の将来的企画を構想した。またヘブライ・ユダヤ思想、イスラム、キリスト教のシュンポジウム(12月、千葉大)では、司会や発表によってこのエチカの国際化に努めた。これから特にフランスを中心とした研究者との交流を強め、研究を国際化する土台をすでに強固にした。
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