研究概要 |
本研究は現代世界の価値観,文明の伝統,民族的特質,共同体形成などが混乱し激しく衝突する只中に,和解と共生を主にした公共空間を開拓しようとして本年度も新倫理学の構築を試みた。その実績はまずその構築を世に問うという仕方での研究書の刊行に窺われる。第一にヘブライ存在論ハーヤーに東洋思想を加味した現代的倫理学の著作『存在の季節-ハヤトロギアの誕生』が挙げられる。次に7〜8年をかけて21世紀の人間のあり方をキリスト教伝承から展望して世に問うた『キリスト教辞典』(岩波書店)が挙げられる。また研究者グループが共同して現代にあって語るべき価値を考究した『語りえぬものからの問いかけ』(講談社)は特筆に値する。第二のギリシア教父研究は第二回東方キリスト教学会が開催され、機関雑誌『エイコーン』も続刊され,日本の海外文化研究の最も手薄な領域をカバーしている。こうした研究は,京都フォーラム(日本の各大学,ユネスコ,在野研究者などのシンポジウムの場)の公共哲学と同一プロジェクトを組み,公教哲学講座といても結実した。他方フランスの研究者との交流も活発でパリ,トゥルーズ,リョンなどのエチカ研究所との研究会,プロジェクトの立ち上げが続けられ,本研究代表者も渡仏によって様々な成果を得た。他方、図書の収集,資料収集も進み,国内の研究合宿も幾度か実現された。
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