平成15年度は、「文化と宗教」を主要テーマとして研究実績をつみあげた。1方では東方キリスト教学会とその学会誌『エイコーン』の出版を発展させつつ、ギリシア教父研究を続行し、聴従的解釈学、脱自的エペクタシス的倫理と協働態論を深めると共に、他方でそれと協働する形で、ヘブライ的存在論(ハヤトロジィ)の思索をおし進め、現代の実体化同一化文明(市場経済、斉一的情報化、技術による生命体や地球環境の操作など)の批判となるハーヤー的倫理学を構想し始めた。それはフランス語のメッセージとして出版され、また文明・宗教の衝突と和解・共生に向けたアピールとして『1神教文明からの問いかけ』の出版に結実した。このハヤトロジィとその倫理学は、平成15年度5月の国立京都国際会館における、「他者の公共哲学的意義」をテーマとする国際シュンポジウムや7月の「第2回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」国際的シュンポジウムにおいても発表され、さらに11月の東京大学の公開シュンポジウム「死者と生者の共同性」においても講演された。また2004年1月に京都でなされたシュンポジウム「唯1神教と自他論」において、アジア的日本的文化・人間論と1神教的思想との対話の形で語られ深化された。その外に、本研究代表者は、パリに海外出張をし、パリ大学やストラスブール大学などで、文化と宗教の理念と現実に関し、国際的共同研究を実現した。以上のように、平成15年度科学研究費補助金によって、国の内外にわたるハヤトロギィ的倫理学の研究および構想と現代世界へのアピールが大いに進展した。
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