本年度は、前年度に引き続き、未整理の西田の原稿やメモ類の調査・整理を行うとともに、これまでの西田哲学研究の中で蓄積されてきた諸成果の収集を行うことに努めた。設備備品費および旅費は、当初の計画に沿って、この目的のために使用された。具体的には、東京大学や早稲田大学などに赴き、詳しい文献調査と資料の収集にあたるとともに、必要な文献の収集・整備を行った。 以上の基礎作業を踏まえて、西田哲学、とくにその後期思想の成立過程を明らかにするために、基礎文献・二次文献の読解を進め、西田の後期思想の核となる概念、たとえば<行為的直観>や<歴史的身体>などの解明に努めた。 その際、西田の後期思想の成立過程を発展史的にたどるだけでなく、当時の西洋の哲学との批判的対決という観点、また西田が当時置かれていた思想状況や西田に向けられた批判との関わりという観点を視野に入れ、開かれたパースペクティヴのなかで西田の思想の発展、とくにその後期思想の成立プロセスを考察することを試みた。 2002年9月および2003年2月には、中国から日本哲学研究者を招き、日中哲学シンポジウムを開催して、日本哲学の今日的意義に関して議論を深めることができたが、その他、国内の研究者とも西田哲学の意義をめぐって積極的な対話を行い、研究のいっそう進展を図ることができた。
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