西田幾多郎が残した未整理・未公開の資料を調査・整理するとともに、これまでの西田哲学研究の中で蓄積されてきた諸成果(欧米における諸研究を含めて)の収集を行い、発展史的研究のためのに必要な資料整備を行った。設備備品費および旅費は、当初の計画に沿って、この目的のために使用された。 以上の基礎作業に基づき、また近年多くの成果を生みだしている内外の西田哲学研究者と積極的な対話・相互批判を行うことを通して、西田の後期思想の形成過程について詳しい検討を行った。その際、西田のテクストを読み解くだけでなく、当時の思想的・政治的な状況や、当時西田に対して加えられた批判なども視野に入れて、その形成過程を明らかにすることを試みた。 西田の後期思想には、生命や身体、あるいは行為や歴史を客観的なものとして固定し、対象的に捉えようとする西洋の思惟に対する批判が込められていたと考えられるが、本研究ではとくに、そのような後期西田哲学の独自性を明らかにし、それが持つ現代的な意義についての解明を行った。これらの成果は別添の「研究成果報告書」に冊子体の形でまとめられている。
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