本研究は、中世末から近代初頭にかけての南アジアにおいて、ヨーロッパからのキリスト教宣教師たちが思想交流と異文化理解に果たした先駆的役割、および近代インド思想の成立に及ぼした貢献について、文献資料を駆使して究明するものである。 本年度は、研究計画の最終年度として、研究の一応の締めくくりのために、当該研究に必須な資料を吟味し、資料の具体的分析を進めた。資料としては、上智大学図書館、ドイツ・バイエルン州立図書館、オーストリア・ウイーン大学中央図書館と同大学インド学図書館から主として収集したものを用いた。今年度も引き続いて、ヴァティカン図書館(ビブリオテーカ・ヴァティカーナ)、教皇庁立ウルバニアーナ大学図書館などの便宜も得た。ミュンヘンでは、オブライト会所属のウィリ・ヘンケル博士と会い、文書館での検索にご協力いただき、書誌学的なアドバイスも受けることができ、収穫だった。このように、最終年度における分析作業は順調に推移した。 資料収集と並行して、ヘンケル博士のみならず、各図書館・研究所で学者・専門家と意見交換し、また助言を頂いた。 以上の収集活動によって、とりわけイタリア出身のイエズス会士で南インドにわたり宣教活動に生涯を捧げたロベルト・デ・ノビリとギウゼッペ・ベスキの事績についての研究資料を充実させることができ、今回の研究計画に限らず、将来的にも当該分野の研究活動に資することができると確信している。 本研究の成果は、一部を講談杜新書メチエの新刊『ヒンドゥー教-その過去と現在-』(単著)に活かすことができた。
|