平成14年度は、前年度に引き続き、新聞や仏教およびキリスト教系宗教団体の機関誌を資料として、明治から大正にかけての伝統的な死の対処のあり方や慣習の変化、それにともなう死や生についての意識の変遷について分析した。特に明治中期以降に盛んになった「風俗改良」運動、明治民法成立から公園型霊園にかけての墓地の位置づけ、戦後の社葬の流行にみられるような「死者顕彰の大衆化」傾向等について、歴史的な流れを追った。その調査結果については、平成14年9月に大正大学で行われた日本宗教学会第61回学術大会・特別部会「墓と戒名」において、「近代化と葬儀の移り変わり--葬の個人化を中心に」と題して発表した(発表要旨は『宗教研究』76-4(335)、平成15年3月掲載予定)。 また、昭和から平成にかけて経年的行われた、葬儀についてのいくつかのアンケート調査を分析することにより、ここ十数年の葬儀変化の傾向についても考察した。その結果、戦後一貫して続いてきた都市化に伴う葬儀慣習の変化ともう一段異なる変化を指摘できることがわかった。高度経済成長期以降、葬儀の個人化がさらにすすみ、葬儀をおもに故人のために行う儀礼と見る考え方が広がり、その結果、従来の遺族の通過儀礼として側面など、社会儀礼としての性格が葬儀から失われて、葬式を行わないという選択肢を含めて、葬儀のあり方が多様化してきていることが明らかとなった。以上の研究成果については『死生学研究』1号(平成15年刊行予定)に論文として発表した。
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