(1)新宗教教団修養団捧誠会に関する質問票調査の比較 本年度は、昨年度に実施した質問票調査と、平成元年に実施された質問票調査の結果の比較を行なった。その結果、会員の信仰生活において、捧誠会のおよぼす影響力に複雑な変化が見受けられた。会に入会して、心の支えを得たと感じている者は、前回より10%増えている一方、会を宗教団体というよりは修養団体というふうに受け止めている者も10%増加している。だが、会に関わる活動の際には、ふだんの生活とは異なるおごそかな感じを抱く者が半数を越え、前回調査の結果と逆転した。これらの点からは、会員にとっての会の微妙な在り方が反映されており興味深い。そして、昭和58年の教祖の死から20年経ち、教祖との直接的な交流はないものの、残された教えや著作を通すことによって、会員が持つ教祖のカリスマ性への信頼は依然として高く保たれているのがうかがわれた。さらに、組織の拡大をそれほど望まなかった教祖の考えもあり、前回調査では、会員も同様の考えを支持していたが、今回の調査では、今後の会の発展のために新会員の獲得を考えている者が前回よりも7%ほど増えている。これは、さすがに会員自ら、会の高齢化の深刻さや教勢の弱体化などを自覚しだしたのかもしれない。また、会員の社会生活における価値観等も複雑に変化しているものの、前回から見受けられた保守的な傾向は今回の調査でも散見できる。今後さらに詳しい変化をみるためには、実際に前回調査対象になったものだけを今回の調査データから抽出し、その回答結果を比較することが必要となるであろう。 (2)特定の信仰を持っていないと自覚している諸個人への面接調査 比較参照のために取り上げる、新しい霊性(スピリチュアリティ)の文化として、本年度は死生観に関わるスピリチュアリティに焦点を当てた。医療関係者やケアに関わる実践を行なっている人たちと懇談、聞き取りの機会をもった。
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