(1)新宗教教団修養団捧誠会に対する追跡調査 昭和62年以降3年間に渡った調査の追跡調査を実施し、教団行事への参与観察や会員へのインタビューを行なった。主に、平成元年に実施された質問票調査の追跡調査を行ない比較分析した。その結果、会員の信仰生活においては、捧誠会の及ぼす影響力に複雑な変化が見受けられた。会を宗教団体というよりは修養団体として受け止めている者が増えるとともに、入会により心の支えを得たと感じている者も前回より増えている。そして、会に関わる活動の際には、ふだんの生活とは異なるおごそかな感じを抱く者が半数を越え、前回調査の結果と逆転した。これらの結果には、現在、会員にとって、宗教教団としての会が微妙な在り方をしていることが反映されている。だが、教祖に関していえば、昭和58年の没後から20年経ち、教祖との直接的な交流は不可能になったものの、遺された教えや著作を通すことによって、教祖のカリスマ性への会員の信頼度は依然として高く保たれている。今後さらに詳しく変化をみるためには、実際に前回調査対象になったものだけを今回の調査データから抽出し、その回答結果を比較することが必要となるであろう。また、会員の社会生活における価値観等も複雑に変化しているものの、前回から見受けられた保守的な傾向は今回の調査でも散見できる。それとともに、社会生活よりも個人の身近な生活重視という傾向もみられ、現在の日本の社会意識の特徴との相似がうかがわれた。 (2)特定の信仰を持っていないと自覚している諸個人への面接調査 現代日本人の宗教性の見取り図的ないくつかの類型を発展させるべく、比較参照のために、新しい霊性(スピリチュアリティ)文化に親しむ人々へのインタビューを行なった。死生観に関わるスピリチュアリティにも焦点を当て、医療関係者やケアに関わる実践を行なっている人たちとの懇談、聞き取りの機会をもった。
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