本研究は、年間30万人を迎えるといわれる日本の代表的巡礼である四国遍路の現状の一部を明らかにしようとするものである。四国遍路の空間的広がりは膨大なものであり、その全容を短時間に掌握することは不可能である。そのため平成14年度はいくつかのポイントに研究対象を絞った。 伝統的な接待慣行が現在どのように変容しているかについて昨年度に続いてアンケート調査を行った。調査対象となったのは高知県土佐市高岡町の第36番札所清滝寺周辺である。サンプル数は約200である。 現代はおびただしい数の遍路体験記が自費出版の形で刊行されている。それらは、現代における四国遍路の実態に関する貴重なデータもあるし、また現代遍路(ほとんどが歩き遍路)の諸観念が至るところに記されている大切な資料である。本年もそれらの分析を行った。 歩き遍路は四国の自然環境に触れるわけであるが、それはさまざまな自然認識を生み出すことになり、そのことが彼等の体験全体に大きな意味を持っている。景観認識と遍路体験の関係についての考察を進めた。 霊場寺院おもに高知県の諸札所を中心にインタビュー調査を行い、現代遍路の変容について霊場側寺院の考えを収集し、若干のデータを集積した。加えて四国遍路関連の文献調査を県立図書館を中心に渉猟した。以上の分析結果については若干の論文に成果を発表しつつあるし、研究成果報告書も作成中である。
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