平成14年度4月〜10月にかけては、国内において平成13年度に収集したデータやテキストの分析・翻訳を進めた。特に、ヤヤサン・プンガヨマン・マジャパイト幹部によって編まれた"BUNGA RAMPAI"は、会員の信仰生活の指針を示すものであり、重点的に翻訳および解釈作業を行った。"BUNGA RAMPAI"全文の分析は現在も進行中であるが、その誕生についてはバリにおける宗教改革の影響を受けたと考えられる。バリのヒンドゥー・ダルマの経典は"UPADESA"であるが、これは、統一インドネシアの一因として国是パンチャシラに定められた一神教への体制をバリ・ヒンドゥーが整えていく必要性から誕生したものであった。ヤヤサンも、オーソリティを獲得するために自らの経典を編んだと理解できる。オーソリティへの執着は、少人数の集団でありながら法人化したり、イスラム教を初めとするすでに国家に認められた諸宗教の信仰のパターンを真似たりする点からも窺い知ることが出来る。 平成14年度10月には、イスラム過激派によるバリ爆破テロ事件が起こり、バリ島はかつてない宗教的緊張に包まれた。現地調査は12月下旬となったが、ヤヤサン会員をはじめ、バリ人のテロやテロ犯人、そしてイスラムに対する見解は極めて冷静なものであった。人々は異教徒への自らの立場を「トレランシ(寛容)」と表現し、その重要性と可能性を説いた。 今後は・テキストの翻訳を急ぐと共に、ヤヤサンの信仰実践をインドネシア、東南アジアにおける実践宗教再生の流れの中で位置付ける作業を進める。
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