1.本研究の第2年度として、本年度は方法論の確立と公表、現地での資料収集を主に行った。研究成果をシンポジウム等で報告し、また著書、論文で公表するとともに、台湾(台北)に2回の研究、調査出張、国内に6回の調査、資料収集出張を実施した。 2.近現代東アジアにおいて「国民」形象化の問題を考える上での、方法的議論の前提として、ここ十年来研究してきた日本の19世紀の問題を、東アジアの問題に視野を拡大するかたちで、一冊にまとめて公刊し(『江戸儒教と近代の「知」』ぺりかん社)、それを主内容とする博士論文『日本における「国民国家」の発現と「儒学知」の変容』を大阪大学に提出して、学位を授けられた(2002.12)。また、先年北京社会科学院で開催されたシンポジウムでの報告を中国語、日本語双方で公表した(『東亜近代哲学的意義』2002.8および『東アジアと哲学』ナカニシヤ書店2003.2)。いずれも近代日本の問題を突破口に新たな「東アジア思想史」の構想を提示したものである。他に3篇公刊した。 口頭報告としては、「竹内好と近代日本」(立命館大学人文科学研究所2002.12)と、「近代知識人と『アジア』論-竹内好の課題」(名古屋私立大学・日中哲学シンポジウム「近代の歴史とその物語」、2003.2)等を行った。これは共に、中国研究者、竹内好の議論の今日的意味(ナショナリズムとグローバリゼーションの相剋をどう抜け出すか、という課題)を、日中共有の問題として考えることを目指したものである。 3.今年度、2度の台湾への研究出張においては、輔仁大学、東呉大学等の研究者との対話を行うと共に、次年度の研究に向け、日本で手に入らない貴重資料を数十点収集した。
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