本研究は、早稲田大学図書館蔵「教林文庫」蔵書悉皆調査によって、「教林文庫」の蔵書形成の過程を明らかにし、新たな目録を作成し、併せ文庫の個別の蔵書についても、研究することが目的である。特に、厳覚と覚深という僧侶に注目し、近世前期における叡山僧侶の学問活動の方法や実態・人的ネットワークを解明する。 1、研究計画実施のため、パソコン一式を購入し、データベース化の基礎条件を整えた。また、調査に必要な、図書・消耗品等を購入した。 2、三年計画の初年度として、9月25日〜27日、12月17日〜19日、2月5日〜7日の一回にわたって、「教林文庫」の個別書誌調査を行い、数百点についてカード化を進めた。その結果、カード化作業は、来年度にほぼ終了する目途がついた。その後は、カードの確認と、データベース化のための入力を行うが、その入力方式についても、試行錯誤の末、統一できた。 3、厳覚・覚深の書写奥書を有する典籍は「教林文庫」以外にも散見するため、研究補助員とともに調査を実施した。特に、滋賀県大津市の叡山文庫の調査は3回行ったが、同文庫は小規模のため、一日に閲覧できる点数が限られ、さらに複数回の調査が必要である。関連して、京都市の大谷大学・龍谷大学や、金沢市の石川県立図書館などにも、出張し書籍の調査を行った。 4、「教林文庫」をはじめとする典籍の内、さらなる精査が必要なものについては、紙焼き写真を撮影・蒐集した。 5、書誌調査の結果、従来の簡便な目録に漏れていた書籍を、新たに見出すことができた。また、目録の誤りを正すデータも、多く得られた。 6、数百点の精査の結果、「教林文庫」諸本の蔵書印が多種あることに気づき、来年度は蔵書印撮影のための、重点調査も行うことにした。
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