研究課題/領域番号 |
13610051
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大越 愛子 近畿大学, 文芸学部, 教授 (00223777)
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研究分担者 |
白水 士郎 近畿大学, 文芸大学, 講師 (10319759)
岡野 治子 広島大学, 文学部, 教授 (50204003)
井桁 碧 筑波女子大学, 国際学部, 助教授 (40306105)
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キーワード | ジェンダー / フェミニズム / セクシュアリティ / 暴力 / 優生思想 / 日本的共同体 / 性と生殖に関する権利 / 世界システム |
研究概要 |
当共同研究の最終年度に当たる今年は、近代日本の共同体思想を一国主義的視点にとどめないで、ウォーラースタインのいう近代世界システムとの関連において考察し、外部の視点から内部共同体のあり方を逆照射することに力点を置いた。そうすることによって、日本共同体思想を「構造」的観点から洞察しえるし、それが現代にいたるまで様々な形で再生産されている状況を把握できると考えるからである。 そうした観点の下で、大越と井桁は、2003年8月10-17日にトルコのイスタンブールで開催された世界哲学会議に参加した。会議の綜合テーマは「世界の諸問題に直面する哲学」である。ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアなど世界各国から哲学者か集まり、「社会・政治哲学」「文化哲学」「教育哲学」「人権」などの個別的テーマについて、各文化的伝統をふまえつつ、内部に自閉しない視野で、討論を重ねる様は壮観であり、知識を広めるだけではなく、人間的交流も行い、多くの収穫を得た。また開催地がイスタンブールであったこともあり、イスラーム文化の末端に触れる事が出来たのも、「日本的共同体思想」を外部の視点から再考していく契機となったと思う。白水は継続して日本と欧米の優生思想の展開と背景に関する研究を深めた。 以上のような成果を交換し、研究報告集に寄稿する論文・研究報告の叩き台とするために、2003年11月23日に神戸の兵庫県私学会館にて研究会をもった。各自の成果報告以外に、大越が「女性と戦後思想」を発表した。これは日本の戦後思想が一国主義的側面を持ち、その意味で「日本的共同体」の残滓を引きずっていること、そうした傾向を打破し、グローバルな観点で「日本的共同体」の戦争責任を裁き、新たな可能性を開いたのが、「女性国際戦犯法廷」に結実した女性運動であることを意義づけた発表であり、当研究会の総決算とも言えるものである。 当研究会の研究成果は、提出される研究報告集で差し当たり一段落するが、なおこの研究会で結んだアジアの研究者たちとのネツトワークを通して、さらにアジア共同社会の可能性を探る研究を継続して行くつもりである。
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