研究概要 |
今年度は研究分担者の研究の状況について情報交換をしながら,各自の研究領域で研究調査を行った。各研究者の研究内容は以下の通りである。 劉麟玉:植民地下の台湾における学校唱歌の導入と展開の過程について調べ,唱歌教育に見られる3つの様相である唱歌教育の政策,教育理論および教材がそれぞれ台湾に定着した年代を考察し,その結果を学位論文としてまとめた。今後は唱歌が台湾人の中でどのような形で受容され変容したのか調査する。 奥忍:洋楽受容による日本人の歌唱表現の変容の足取りについて,発声法を中心にレコードやテープの録音資料をもとに調査した。今後は,子どもの歌唱を中心に,学校唱歌の範唱,童謡の歌唱資料を対象にして分析を行う。 権藤敦子:新民謡の流行、および、わらべ歌や民謡の採集、研究,編曲の動きから、唱歌の普及にともなう新たな「national identity」の意識の芽生えと展開を考察した。これには、大正期の童謡運動や音楽教育が影響しており、今後、個々の動きを調査する。 塚原康子:明治期〜昭和戦前期までの「日本音楽」を示す用語と実態(含まれる種目名)を調査し,(1)西洋音楽の浸透と新しい日本音楽系種目の認知とがその意味内容を変動させ、(2)国民文化樹立を掲げた15年戦争期(1931-45)は日本音楽振興の画期でもあったことがわかった。 ゴチェフスキ:日本の「国楽」論の一根源である「national music」思想が、南北戦争後のボストン地方で特に盛んだった事を、当時の英語文献から分かった。それが直接日本の音楽教育発展に影響を及ぼしたと思われる。これからその思想の内容をもっと明らかにしたいと思う。 次年度は以上の研究成果を学会で発表し,相互に意見交換を行い,報告書としてまとめていきたい。
|